生命保険の選び方

生命保険の選び方について、具体的な考え方を5つのステップでご説明します。ステップに沿って、自分や家族に、本当に必要な保障が何かを考えてみましょう。
少し面倒に感じるかもしれませんが、これは、自分や家族の将来を見据える作業でもあります。将来のための資金計画や、安心して暮らすための基礎を固めるためにどうすればいいのかを考える基礎にもなるものですから、時間を取って話し合ってみてください。

1. 家族のライフイベントを考える

まずは、家族のライフイベントについて考えます。
ライフイベントとは、自身の結婚や子どもの誕生、子どもの入学、旅行、車の買い替えといった、人生の営みの中で起きる大きなイベントのことです。
ライフイベントについて考える際には、家族ごとのライフイベントを書き出した表を作って整理します。ライフイベントが書き込める本や、インターネット上のテンプレートなどを活用すると便利でしょう。

2. もしものときに必要となる保障を考える

お金の問題につながるリスクについて洗い出し、保障が必要かどうかを検討します。
具体的には、以下のような点について考えてみましょう。
・その人が亡くなったときに生活に困る家族がいるか?
誰かが亡くなったときに生活に困る家族がいる場合は、死亡保険の加入が必要です。残された家族に必要な保障額を確保しましょう。
・病気やケガで働けなくなったり、医療費がかかったりしたときに貯蓄で対応できるか?
病気やケガをすると、「医療費」「働けなくなった場合の生活費」「入院などにかかる雑費や家族の交通費」などが必要になります。これらをカバーできるだけの貯蓄がない場合は、医療保険がん保険への加入を検討しましょう。
ただし、医療費に関しては、公的医療保険(健康保険・国民健康保険船員保険・各種共済組合など)の高額療養費制度を利用することができます。また、会社員であれば、病気やケガで長期的に収入がなくなっても、最長1年6ヵ月のあいだ傷病手当金を受け取れる可能性があります。中には、独自の追加給付制度を用意している健康保険組合もありますので、確認してみてください。一方、国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度はありません。
利用できる制度や必要なお金は個々の家庭によって変わります。まずは自分や家族が利用できる制度を把握し、その上で、不足分を補える保険に加入することが大切です。
・将来のための貯蓄ができているか?
学費や老後資金に不安がある場合は、学資保険や個人年金保険を活用して資産形成するのも方法のひとつです。
生命保険には、所定の要件を満たした場合、支払った保険料が所得控除の対象になり、所得税や住民税の負担が軽減できるというメリットがあります。学資保険や個人年金保険は、この保険料控除による税負担を軽減しながら、元本割れのおそれから早期解約しづらい点を利用して資産形成ができるというメリットもあります。そのため、貯蓄をつい使ってしまうという人や、計画的な貯蓄が苦手という人におすすめです。
・家族や自分に介護が必要になったとき、介護費を支払えるか?
家族や自分に介護が必要になったとき、介護費を貯蓄でカバーできない場合は、介護保険を検討することになります。
介護にかかる費用は、介護度や介護ヘルパーなどの利用頻度によって変わりますが、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2021年12月)によると平均月額8.3万円といわれています。介護サービスにかかる支出のほか、医療費やおむつ代といったそのほかの支出も増加する点に注意が必要です。

3. 必要な保障額を考える
自分や家族が備えるべきリスクがわかったら、具体的にいくらあれば安心なのかを検討しましょう。
保険での保障を考える前に、まずは公的制度について確認します。

<リスクごとに利用可能な公的な支援の例>

死亡の場合は遺族年金
病気やケガの場合は高額療養費制度や傷病手当金
学費は児童手当や各種無償化制度
老後は老齢年金
介護は介護保険 など

それぞれのリスクごとに、上記のような公的な制度を利用することができます。また、団体信用生命保険に加入して住宅ローンを組んでいる人は、そちらの保障も利用できるでしょう。

4. 必要な保障内容を満たす生命保険を探す

必要な保障内容が決まったら、それを満たす生命保険を探しましょう。
死亡保険や医療保険には、多くの商品があります。保険商品ごとに特徴が異なるため、希望を満たすものを選ぶことが大切です。
保険を見比べる際は、以下について確認してみましょう。

<生命保険を見比べる際のポイント>

保障内容:主契約の保障内容だけでなく、付加できる特約についても確認
保障金額:必要な保障がカバーできるか
保障期間:一定期間のみ保障するのか、終身保障なのか
保険料:毎月支払える金額か、家計を圧迫しないか
保険料の払込期間:短期払いにするか、終身払いにするか
解約返還金:解約したときにお金が戻ってくるかどうか

5. 適した生命保険がない場合はいくつかを組み合わせてカバーする

必要な保障を検討した結果、自分が希望する保障をうまくカバーできる生命保険がない場合は、いくつかの保険を組み合わせて契約することを検討しましょう。
ただし、この場合、保険のかけすぎを防ぐために、いくら受け取れるのかについてしっかりチェックしておく必要があります。
なお、同じ保険会社で同じ保障内容の保険に重複して加入した場合、損害保険であればどれかひとつの保障しか受けられないことがありますが、生命保険では保障の対象になります。しかし、あまりにも重複加入が多いなど、契約の妥当性が疑われる場合には、保険契約の解除(重大事由解除)といったケースにつながるおそれがあります。念のため、保障内容や支払い条件などを確認するようにしましょう。

どの生命保険を選ぶことが正解なのかは、各家庭の状況や資産状況によって異なります。保険は、自分や家族に起こりうるリスクやライフイベントに必要なお金を考えた上で、適切な商品を選ぶことが大切です。
また、状況に変化があったときは、適宜見直しをすることも必要です。すでに保険に加入している人も、この機会に、今加入している生命保険が適切かどうか、あらためて保障内容や保険料を見直してみてください。